食が変われば食器も変わる
株式会社アイトー
「瀬戸物」という言葉が持つ従来の意味としては、「愛知県瀬戸市周辺で作られる焼き物(瀬戸焼)のこと」を指します。ところが現在では「せともの」=焼き物・陶磁器を総称する言葉として使用されている場面も多々見かけられるように。全国各地に焼き物の産地はありますが、それほどの影響力と認知度を誇る瀬戸焼。
そんな愛知県瀬戸市に誕生し、現在も消費者と作り手をつなぐため、器の製造を続けている株式会社アイトー。商品作りのことから産地の抱える問題点まで幅広く伺いました。今回はメーカー編という事で工房の方のインタビューも更新予定です。是非併せてご覧ください。
取材に対応してくださった代表取締役社長の疇地さん
ー会社は何年創業になりますか?
【疇地】1949年創業です。弊社はもともと愛知製陶所という瀬戸のメーカーの関連会社として設立した経緯があり、和食器を取り扱う会社としてスタートしました。
ー現在はメーカーとして活動している?
【疇地】全国の陶磁器を取り扱い販売する商社としての側面と、瀬戸や美濃を中心として焼き物を製造するメーカーとしての側面、大きく分けるとこの2つに分類されます。
陶磁器の商社としては、有田焼や波佐見焼、九谷焼、清水焼など各地の様々な種類の陶磁器を全国に流通させる仕事をしています。発祥の地であるこの瀬戸店(愛知県尾張旭市)では、ブランドオリジナルの商品の企画・販売を主に行っています。株式会社アイトーは企画・販売会社であり、モノづくりの部分は工房さんと協力しながら進めています。工房や窯元の特徴を理解して、世間のニーズと掛け合わせる。いわゆるファブレスメーカーに分類されます。
営業担当の加藤さん
営業担当の青田さん
ーこの愛知県尾張旭市の産地や地域の特徴について教えてください。
【疇地】愛知尾張旭市は瀬戸市の隣に位置していて、大きく括ると瀬戸エリアにあたります。瀬戸エリアの特徴はやはり、焼き物の産地。産地というのは、産業集積があるという事。なんでこの地域が焼き物の産地になったのかというと、土が豊富にあったからなんです。良質な土が沢山取れる産地であったことを活かして、焼き物の産地へと発展していきました。土から始まり、器を作るための型屋さんや生地屋さん、道具を作る道具屋さん、それらが近隣にすべてそろっていたことが、ここまでの産地が作り上げたことにつながるのではないかと思います。この瀬戸エリアは日本で一番最初に焼き物の産業集積が出来た場所なんです。
ー日本各地にも焼き物の産地はあるかと思いますが、この地域ならではの特徴は何かありますか?
【疇地】一般的な機械生産だけでなく、人の手を加えて変形させていくような変形ものを得意としています。また沢山の技法がこの産地にはあるという事も特徴になるかと思います。いろんな加工がこの産地で出来るので、”なんでもできる”というのも特徴です。
自然の色合いをお手本にした翆シリーズ
その反面、”なんでもできる”からこそ地域の特徴がなくなってしまうという懸念もあります。ここが瀬戸焼を打ち出す際に苦労している部分です。特徴が出せておらず、そして表現しづらい。その背景には、この瀬戸市が最初に焼き物の産業集積が出来た場所である歴史があるように思います。歴史的に瀬戸産地では、日常生活に対応する多種多様の器を作ることが求められました。様々な用途に対応するためには、一つの作り方だけにこだわるのではなく、幅広い製造方法を模索してニーズに対応する事が必要になりました。多様性は広がった反面、”これが瀬戸焼です”と示す明確な定義が存在しないのが、難しい点です。
花形をイメージにした花シリーズ。色・形・サイズの種類も豊富
ー会社を継続させていくために、今後挑戦していきたいことは何でしょう。
【疇地】人々の生活がどのように変わっていくかを、まず僕らは一番に理解していかないといけないと思っています。食事の仕方や食べるものが変われば、食器も変わる。当たり前のことですが、それを考えながら商品を作ることが一番大切です。例えばコロナ禍によって、消費者の食事の仕方は一変しました。一緒に食事をとる人数も、食べ方も食べる場所も、以前の生活とは同じようにはいかない。日常生活に溶け込む商品を展開するブランドだからこそ、消費者のニーズをいち早く察知して商品の展開に生かしていくことが求められます。
〈aito製作所〉というブランドの観点から言えば、もっとメーカーとして前面に出てモノを販売していきたいと考えています。創業から70年たち今まで培ってきたノウハウを直接お客様に知ってもらいたいからです。今までは工房や窯元の特徴を理解し、お客様のニーズを掛け合わせて商品を作るような、いわゆるつなぎ手に徹していました。どちらかというと裏方の仕事で、表に出るようなことは少なかったかと思います。もっとお客様との接点を持つことで、より良い商品開発に生かすことが出来る。その繰り返しを経てお客様に求められる商品作りをしていきたいです。