【トークセッション】 梶原加奈子×石田製帽
「未来に繋ぐ、石田製帽のものづくり」
匠の技術を世界に発信するサロン型ストア「SUPER ZERO Lab(南青山)」にて5月10日(金)~5月23日(木)に開催された〈CRAHUG〉日本の麦わら帽子展。 晴れの国・岡山の“石田製帽”を始め、CRAHUGのハットブランドから厳選した日本製の帽子を多くの方に手に取って丁寧なものづくりを感じていただきました。
そして5⽉11⽇(⼟)に開催されたCRAHUGクリエイティブディレクター梶原加奈子さんと株式会社⽯⽥製帽代表取締役社長石田勝士さんによるトークセッションイベント。 インスタライブと連動して、「未来に繋ぐ、石田製帽のものづくり」についてお話しいただきました。 本記事ではとても和やかな雰囲気で行われたトークセッションの様子をお届けします!
石田製帽のご紹介
まずは、石田さんに石田製帽のご紹介をしていただきました。
【石田】岡山で石田製帽という麦わら帽子の会社をやっております。麦わら帽子屋さんです。 とても細かい素材のものを縫うのが得意で国産にこだわっています。コロナ禍で業界全体が本当に大変でしたが何とか生き残らせていただいています。
【梶原】CRAHUGができて最初の頃から関わってきて、写真やインタビューなどを通じながら触れ合ってはきましたが、石田さんと直接お会いするのは初めてですね。よろしくお願いします。
地場産業として生まれた帽子作り
ー帽子づくりをはじめてきっかけとは何ですか?
【石田】実家も帽子屋さんなのですが、元々28年くらい前までは地元を離れてサラリーマンを10年ほどやっていました。当時たまたま休みに地元へ帰ったときに、弟が麦わらの細かい部分を縫っていていて、その麦わら帽子の値段を聞いてびっくりしました。安すぎて大丈夫かと。冒険みたいな感じでやっていると聞いて、それを何とか営業しようと決めて地元に帰る決心をしました。そこがスタートです。家業を継ぐ選択肢はなくて絶対都会に出ると思っていました。
【梶原】実家を出てみたけれど家業の素晴らしさに気づいたんですね。そして残していきたいと感じるようになったんですね。
【石田】そうですね。弟が帽子を縫っているのを見て神業だと思いました。しかし、その評価が値段を考えるとあまりにも低くてそこをどうにかしたいと思いました。なので1994年くらいから始めていきました。
【梶原】かなり早い段階から自社で製造し、販売して発送するという取り組みをしていたんですね。
ーサスティナブルな取り組みとしてしていることは?
【石田】石田製帽の捉えるサスティナブルは、材料を使い切ることやお客様が購入してくださった製品の手入れや修理をして使いきれるようにすることだと思います。ほかにもヴィンテージ素材で作った帽子を販売しています。藍染にしたり、紙の材料をもう一度染め直して作り直しています。デッドストックのものも改めて染め直してみるとかわいくなりました。
【梶原】材料を残さないようにしていることと、デッドストックをいろんなデザインに変えながら販売し続けているということを心掛けているんですね。
石田製帽のものづくりの強み
ー石田製帽のものづくりの特徴とはなんですか?
【石田】うちの一番の強みは縫製技術と加工技術がちゃんとしているところだと思います。 本当に究極の細かいところまでやる工場です。仕立てがすごく良いです。あとは素材関係で私が材料フェチで(笑)美しいものやヴィンテージのものを含め材料が大好きです。結構詳しいので新しいものを作るときにもなにかそういうものが背景にあります。縫製技術は弟がすごく上手なんです。彼から私たちも教えてもらっているのでそこも強みだと思います。
【梶原】すごくものづくりが好きな社長だというのは前から存じ上げていましたが、やはりとても帽子愛に溢れていますね。
ー石田社長による帽子づくり実演
今回は石田社長にはまじコラボの麦わら帽子を実演で縫ってくださいました。
【梶原】丸く縫えるような形になっているんですか?
【石田】手前に引きながら縫っています。最初渦巻きを作るときに、いせ込みをしています。
【梶原】すごい早いですね。今何気なくやっていましたがこのカーブはなんですか?どのようにやっているのですか?
【石田】押さえながら仕立ての位置を変えて縫っています。大対目検討でカーブする位置を作っていて、5mmくらいまでの違いで合うように作っています。今作っているのはぴったりですね。微妙に指先の感覚でやっています。
【梶原】すごいですね。これぞ職人技ですね。指先となるとロボットではできないですね。何年くらい修行したらできるようになるんですか?
【石田】私はもう25年くらいやっていますが、早い人だと今回の材料なら三ヵ月くらいでできるようになります。いろんな材料を対応していくとなるとすぐにはできませんが、根気を出せば数か月でできるようになります。
【梶原】そうなんですね。ちなみに今時々止めながらやっていますが、サイズの調整をしているんですか?
【石田】この木型に合わせながらサイズを見ています。大きすぎたら少しほどいたりして確認しながら作っています。ここからはつばに差し掛かるので少し難しくなってきます。
【梶原】みるみるうちに完成に近づいていますが、大体1つ作るのにどれくらいかかるんですか?
【石田】材料によって変わってきますが10分くらいですね。25年もやっているので正確に縫える方だと思います。
日本のものづくりの未来に向けて
ーこれからCRAHUGに期待していることはありますか
【石田】工場とお店の二つの事業をやっているのですが、うまく整理できておらず両立が難しいです。工場をやっていくことは只事ではなくて、安心感があまりないんです。そういう面で、CRAHUGのみなさんに是非バックアップしていただきたいと思います。
【梶原】CRAHUGは、CRAFTMAN(職人)とHUG(触れ合う)するように一緒に日本のものづくりを残していこうという思想のもと立ち上がったんですよね。その中では、オンラインサイトで売るだけではなく、職人たちの想いをどういう風にいろんな人に伝えて応援してくれる人を増やしていくかをすごい考えていました。
【石田】そこが本当に難しい部分ですよね。アプローチの仕方はいろいろありますが、毎日帽子を作っているのでなかなか手が回らないです。ありがたいことに、メディアに取り上げていただく機会が沢山あって、本当はそれと同時進行でSNS発信をしたいのですが、なかなか時間が取れなくてできていないです。
【梶原】石田製帽さんは十分知名度もあると思うのですが、その上でのPRや、販促活動というのが時間が取れないというのが悩みであるんですね。
ー日本のものづくりを次世代に繋げていくために
【梶原】次世代に繋げていくために石田社長もとても頑張っていらっしゃると思うのですが、やはり好きなことをやっていきたいという想いが強いエネルギーを生み出しているんですよね。
【石田】そうですね。コロナ禍のときから地元の小学生に寄付をしていて、それがライフワークのようになっています。今まで300人くらいの新入生に寄付してきました。今年で4年目になっていますが、そういう活動を見てくださっている周りのメーカーさんや古い先輩方が良い材料を託してくださったりしていて、やはり信用をそういうとこでいただいたりしています。小さいころから麦わら帽子に触れて、その作りをここでやっているんだよっていうのを伝えていくためにこの活動を続けています。記憶にそういうのがあると、何かに結びついて最終的に一緒に麦わら帽子を作っていくような形になればいいなと思っています。
【梶原】いろんなことを実行する力がすごいですね。やはり石田さん自身が麦わら帽子がすごい好きでいらっしゃるので、その気持ちが好きになってくれる人へ広げていきたいという想いがとても伝わってきます。改めて実際に作っているところを見ると、麦わら帽子の見方も変わると思います。
最後に
限られた時間ではありましたが、今回石田社長には麦わら帽子について熱くお話しいただきました。なかなか見ることのできない帽子づくりの実演までしていただき、CRAHUGスタッフも興奮しておりました…。記事には収まりきらなかったお話はCRAHUGのInstagramのアーカイブにて視聴できるので是非チェックしてみてくださいね。
そして、〈CRAHUG〉日本の麦わら帽子展は終了いたしましたが引き続き「SUPER ZERO Lab(南青山)」にて石田製帽の帽子を販売しております。職人たちが手作業で作り上げた麦わら帽子を、直接見て、触れられる機会ですので是非足を運んでみてください。