【特集】
傘ソムリエの土屋さんに聞く、
天気と上手に向き合う“傘”のこと
雨の日も晴れの日も活躍するアイテム、傘。
天気の移ろいが激しい梅雨の時季だからこそ、そんなお助け役の傘のことをもっと知りたい! ということで、今回は世界で唯一無二の『傘ソムリエ』*をされている土屋さんに傘の出番が多くなるこれからのシーズンに向けて、色々なお話を聞いてきました。
これを読めば、明日から傘を見る目が変わるかも(?)
大嫌いだった傘・・・
ー傘ソムリエの土屋さんが傘と関わるようになったきっかけを教えてください。 【土屋】元々傘嫌いなんですよ、僕。学生時代からずっと、雨の日はあらゆる手で雨に濡れないにはどうしたらいいかっていうことを考えていました。でも、前職の小売業の仕事で傘が嫌いなままレイン担当をさせていただいた時がしんどかったのが1番にあります。こんな傘誰が買うのって当初は思っていました。そんなある時、接客させていただいた時にお答えできなかったんですよ。そしたら、「ここの店員さんなのに何も知らないのね」ってお叱りをいただいて、じゃあ勉強始めるかと色々調べ始めたのがきっかけです。
ー傘が嫌いがスタートでびっくりしました。そこから好きになっていったのは? 【土屋】各メーカーさん、自信あって、誇りもあるんで「この傘すごくいいんですよ」って皆さん言うんですよ。でも、それって僕含め消費者の方に伝わるかなと思った時に分からなくて。じゃあ、もう自分でその中に飛び込めばいいんだって思い、風に強いって言われたら台風の中入ればいいんだと台風の中入って試したりとか、ゲリラ豪雨が1番激しいと言われるエリアに行ったりとか、色々試して行くうちに面白くなって、好きになっていきました。
傘を通して天気と上手に向き合う
ー色々とご自身で実験された中で今の深い知識があるんですね。そんな土屋さんの考える傘の“いいところ”はどこですか? 【土屋】傘って晴れの日でも雨の日でも持ち歩けるっていう、『天気とのコミュニケーションツール』だと思ってます。 雨が降ったらその音を聞けて楽しめるし、晴れた日だったらちょっとお出かけしようかなっていうモチベーションが上がるアイテムにもなります。
機能的な面では、デザインが多種多様っていうところ。 あとはなかなか伝わりづらい細かい部分ですが、骨とかハンドルだったり、技術的な進歩もゆっくりだけどしてるっていうところとかですかね。
ー傘を選ぶ時のポイントは? 【土屋】鏡見てほしいですね。傘さした時の自分の姿を見ていただきたいです。デザインは良いんだけれど、さした時なんか違うなとかがあるので、洋服と一緒で傘もさした時のシルエットってすごく大事です。しかも、自分の体より大きい傘を選ぶと空間に幅がある分、軽い傘でも風に煽られて重く感じてしまいます。
【土屋】あとは絶対に商品情報をしっかり見ていただきたいです。要は商品の下げ札にすべての情報があるんですが、意外とデザインいいからと、それを見ないで買われて後から後悔される方ってすごく多いんですよ。その他にも店頭ではライフスタイルをうかがったりして、傘ソムリエとしてひとりひとりに合う傘をおすすめしています。
ー雨の多い梅雨時はどんな傘を選ぶといいですか? 【土屋】例えば最初から雨降るよという時だったら長傘の方が良いです。でも降るかな降らないかなっていう時は折りたたみの方が良くて、2日連続雨が続く日だと長傘の方が選ばれる傾向があります。
【土屋】また、風が強いなって感じる時は多骨の傘がいいですし、そこまで風が強くないですよって天気予報で言われた場合は、通常の8本骨の傘でも全然大丈夫です。
0.1%しかない、『国産の傘』
ー土屋さんも愛用している〈槇田商店〉の傘の良いところはどこですか? 【土屋】基本、布でできた傘は生地が水分を吸い込む分濡れると重くなりますが、〈槇田商店〉の傘はジャガード織ならではの生地の厚さがあるのでちょっと水分を溜め込みやすいです。ただ、ジャガード織の良さは、この立体的に綺麗な絵が出るっていうところだと思います。一般的に売られている安い傘はプリントですよね。それだと平べったい感じがどうしても出てしまう。先染めの糸で1本1本詰んでいく織物だからこそ、綺麗な絵になって立体的になります。
▶️CHECK! 傘を使用したらできる限り水気を切って、畳むことが長く使うためにもポイントです!こちらの動画から効果的な傘の水の切り方をご紹介しています。
ー確かに、多彩な色の糸を使って柄が織られていて、良い意味で日本っぽくないところもいいですよね。
【土屋】〈槇田商店〉の傘は、古臭くないところも大好きなんですよ。良い傘なんだからもっと広めたら良いじゃん!と槇田さんに言ったことがあります。当時、槇田さんは「あまりあちこちに卸したいとは思わない」とおっしゃってました。「自分たちが目の届くところで大事に販売していただける企業さんにだけ卸したい。そしたら、僕たちもできる限りお手伝いできるし、もっと良いものが作れるし」と。〈槇田商店〉のブランドを大事にされている姿へも共感しています。
【土屋】例えば海外製の傘は機能性をすごく求めるんですけど、逆に日本製の良さっていうのは職人さんがいて、糸から染めて、手で組み立ていて丁寧に作っているという文化的な背景がすごくいいのではないかなと。なので、長く使いたいとか大量生産ではできないデザインを求められてる方にはすごく日本製の傘は良いと思います。実は日本で流通している傘で日本製はたった0.1%いわれており、それ以外の99.9%は海外製と言われています。日本製の傘は絶滅危惧種と言っても過言ではありません。さらにファクトリーブランドとして職人さんが生地作りから一貫して仕上げる傘メーカー様は少ないです。
雨の日も、晴れの日も気分の上がる傘を。
ー〈槇田商店〉のおすすめの傘を教えてください。 ■SCENE 槇田さんの長傘で一目ぼれして、一番最初に買ったのが「SCENE」の傘。多骨の傘って通常はすごく重いんですよ。持った時に、「うわ、めちゃくちゃ可愛い!」っていうのが最初の印象で、次持った時に「軽い!」っていう感動がありました。そして、このグラデーションがすごく綺麗だなと思いました。槇田さんの傘は光に当たった時のこの立体感がすごく好きです。
■Stig Lindberg HERBARIUM 光が当たった時にやっぱ圧倒的に立体感がすごいので、槇田さんといえばこれ!みたいな僕の中のイメージがあります。面が光に当たっただけで、すごい立体的に見えてとても幸せな気分になります。あとはシルエットがすごく綺麗で、ハリ感がやっぱり他のとは違いますね。結構、量産物の傘だと個体差が出るんですが、槇田さんの縫製の良さとしっかり組まれてる感じで生地がピンと張ってとても綺麗なシルエットが出来上がります。
【土屋】〈槇田商店〉の傘は、品質ももちろん高いですが、骨が『グラスファイバー』と呼ばれる樹脂骨でできているので長く使えます。屈曲性があるのでしなやかに曲がり、丈夫でありながら軽さもある骨です。
土屋さん、ありがとうございました!
一つ一つ表情が違えば造りも違う。まだまだ奥が深いアイテムです。〈槇田商店〉の特別な一本のように、お気に入りの傘と一緒に憂鬱な梅雨時も移り変わる天気を楽しんで過ごせたらいいですね。
そして、お気に入りの傘を長く愛用するためにできるメソッドはこちらの記事でご紹介しています。 >>「お気に入りの傘を長く愛用するために」