【イベントレポート】
クリス-ウェブ佳子さんと語る
「日本のモノづくりと旅」

クリス-ウェブ佳子さんのCRAHUG公式アンバサダー就任を記念し、スペシャルトークセッションを開催しました。クリス-ウェブさんご自身で撮影した旅先での写真やエピソードなど、見どころ満載のイベントレポートです。

もくじ

日本のモノづくりの良さとは?

― 本日はよろしくお願いします。早速ですが、クリス-ウェブさんは海外経験がおありかと思います。日本のモノづくりの良さをどのように感じていますか?
[クリス-ウェブさん(以下略)]私はニューヨークに住んでいた時期に日本のモノづくりの素晴らしさに気づいたのですが、その理由のひとつが、海外での日本のモノづくりへの注目度でした。日本製ってすごいんだなって。

― 私もイギリスに行ってから愛国心が芽生えました。皆から日本は素敵な国だね、すごくいいモノを作っているねと言われ、改めて歴史を学び直したり。最近、海外から日本への観光客もすごく増えてきていますよね。
私は海外旅行が好きで、年に一度は渡航していたのですが、コロナ禍以降に初めて国内旅行をするようになったんです。でも一番のモチベーションは私の父でした。父はパスポートを持ったことが無い人で、「日本全国を渡り歩いてからでないと海外には行けない」という信念があって。つい数年前、日本全国をコンプリートしたんですけれど。そういう父の想いを受け継いで、私も機会があれば日本のよいモノを見るべく、今では2ヶ月に一度は国内を旅しています。

― それはすごい。定期的に日本の古きよきモノを見ているんですね。
そうなんです。経年劣化が美しいとされるモノを大切にする。そういう概念が日本のモノづくりには多いと感じます。最近のインテリアのトレンドで、スカンジナビアとジャパンを融合させた「ジャパンディ」というスタイルが定着してきていますが、共通点は木を多用するところ。天然素材の温かみがありつつも直線的でスタイリッシュなデザインに、日本的美意識を感じます。

― 素敵です。諸行無常、禅の考えも含まれたデザインですね。今後もどういうところで海外の方が日本の美に注目し、評価しているのかを探っていきたいです。

クリス-ウェブさんが日本各地を訪ねる旅

― 旅の過程で印象的だった日本のモノづくりや伝統技術はありますか?
1つ目は、西伊豆の<loquat(ロクワット)>という宿泊施設兼レストランで、土肥の300年以上も続く名家の歴史あるお屋敷をリノベーションしています。古い梁をそのまま生かしてあったり。特に紙を貼らずに障子枠だけをディバインダーとして用いていたるのは、古いけれど斬新なスタイルだと感銘を受けました。温故知新を生かした施設に泊まることで、インテリアのアイディアを発見することも旅の楽しみのひとつです。

西伊豆の<loquat(ロクワット)>

― まさに温故知新。最近は本当にそういう建造物が日本に増えていますよね。その他にはありますか?
そうですね。2つ目は那須にあった<アートビオトープ那須>という宿になりますが、2023年に閉業して現在は「無垢の音」と改名して営業しています。こちらの宿に泊まろうと思ったきっかけは建築家・坂茂さんで、掘削中に出た石を使って外壁を造ったり、建築途中に見つけた資材を建造物に取り入れたりと、普通は廃棄されるようなものを利用してデザインされています。ミニマルだけど温かみを感じられる本当に素敵な宿で、いつか再訪したいと思っています。

那須の<アートビオトープ那須>※2023年閉館

― 日本の建築物に触れて、日本の良さを改めて感じられたということですね。
そうなんです。過ごしている時間がとても優しいというか。ナチュラルな照明や木の温もりで、とてもリラックスできる空間です。

3つ目は京都にある<丸福楼(まるふくろう)>というホテルです。元々は任天堂の本社で、こちらは創業当時の建築様式を生かした既存棟と、安藤忠雄さん設計監修の新築棟があって、アンティークとモダンのミックススタイルがユニークです。初期のゲームボーイがエントランス横のラウンジに置いてあるのが印象的でした。

京都の<丸福楼(まるふくろう)>

― なるほど。私も訪れてみたいです。旅行先はどのように探しているのですか?
建築家の作品や新しい宿に泊まることが旅のスタートなのですが、旅先ではガイドブックを見ずにGoogle Mapを使って面白い場所を探すことにしています。地図をクローズアップして美しい海や滝を見つけたり、サーチボックスに「レストラン」と打ち込んで、しらみ潰しに美味しそうなお店を探すのが結構得意です。

お気に入りの旅のお土産


お酒が好きで、旅先で見つけると求めてしまうのがぐい呑みと徳利のセットです。最近は秋田のまげわっぱで作られたセットがお気に入りです。

― 珍しいですね。秋田といえば、CRAHUGが取り組んでいる縫製工場のブランドがあります。<aiile>というワンピースのブランドです。自社でブランドをスタートさせ、地方の伝統的技術の持つ縫製工場と取り組みをすることで、日本のモノづくりの素晴らしさを再認識してもらいたいと考えています。また職人さんの人手不足、さらには地方再生という大きな問題にも私たちは取り組んでいます。
日本のモノづくりに携わる人たちが増える未来!縫製工場の社会見学も兼ねて、いつか秋田に訪れたいです。

― 私もクリス-ウェブさんのおかげで秋田のまげわっぱのことが知れました。やはり会話して、「知る」が増えていくのはいいことですね。

CRAHUGのブランドについて


実は、私が今日身に着けているアイテムも日本のモノづくりに関係しています。この髪に結んでいるスカーフ。Marcaという横浜を拠点とするブランドなんですが、伝統横濱スカーフといって最高級のシルクを用いていて、驚くほど薄くて柔らかいのが特徴です。

― 日本経済に好景気をもたらしたひとつが絹産業なんですよ。世界遺産に登録されている群馬の富岡製紙工場で織られたシルクを海外に輸出していたのが横浜で、横浜を発祥地にスカーフ文化が栄えたと言われています。
社会の授業を思い出しました!もう一つはピアス。新潟にあるジュエリーブランドmonshiroを着けています。適度に朽ちたようなヴィンテージ感がとても好みです。

― このブランドは自然のモチーフを大切にしながら、ヨーロッパからヴィンテージパーツを買い付けて組み合わせているんです。古き良きモノが好きと言われていたクリス-ウェブさんにぴったりですね。
他にもたくさんの日本のブランドをCRAHUGを通じて、製品だけでなく作り手の背景も含めて学ぶことが楽しみです。

CRAHUG公式アンバサダーとして


日本の伝統工芸を伝えるストーリーテラーとして、梶原さんと一緒にプロジェクトを進めていきたいと思っています。CRAHUGを初めて知ったとき、クラフツマンシップとハグ(抱きしめる)を掛け合わせた言葉だとすぐに気がつき、とても良いネーミングだと思いました。3年前のコロナの真っただ中にスタートしたんですよね。

― そうなんです。2000年代に入ってから日本の製造業はどんどんアジアに流れていって、コロナが一旦落ち着いてからも国内生産比率は1.5%と言われています。洋服100着の中でも1着か2着しか国産が無いというような状況なんです。
残念ながら、国産は価格が高いというイメージがあるからでしょうか。

― 何気なく暮らしていると、どのくらい国産製品が減っているのかということにあまり実感が沸かないと思います。でも、そういう中でクラハグが発信する日本の産地のこと、色々なモノづくりのことを消費者の皆さんに知ってもらうことは私たちの使命だと感じています。作り手と使い手との心のハグを押し進めていきたいです。
そうですね。今日の会場でも実際に製品に触れながら、日本のモノづくりについて知っていただけたら嬉しいです。それから、これはちょっとしたアドバイスなんですが、生地に触れる際には、是非手の甲で触れてみてください。実際に体に触れるのは手の甲だったり、皮膚の柔らかい箇所なので、タオルやパジャマなども手の甲で触れてみると、本当の生地の質感がわかります。

― 今後、アンバサダーとしてどのような活動していきたいですか?
日本各地、様々な工場に出向いて取材してみたいと思います。プライベートな旅行でもお願いして、醤油製造所や酒蔵といった作業場を見学させてもらうことがあるんです。誰が・どこで・どうやって造っているのか。それを知っておくことで、さらに惹かれるものがありますから。日本の細やかなモノづくりの裏側を、是非みなさんに発信していきたいと思います。

― ぜひこれからも、CRAHUGをよろしくお願いします!

クリス-ウェブさん SPECIAL MESSAGE

Text & Photo:
酒見ひばり

CRAHUGプロジェクトマネージャー。アパレルで店舗営業からEコマース、WEB販促などを幅広く経験。ついに6歳になった娘を持つアラフォー母。

Date: 2024.08.26

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