クリス-ウェブ佳子さんと
めぐる、
未来の担い手に出合う旅
-愛知県編-
「心豊かになれる一品とともに、その裏側にあるストーリーを届けたい」という、CRAHUG公式アンバサダーのクリス-ウェブ佳子さんが、ローカル文化を継承しながらモノづくりに取り組む日本各地の生産現場をレポート。 今回訪れたのは、日本一のモノづくり県として知られる愛知県。 歴史を礎に、次なるステージへと舵を切る2つの工場から生まれた名品を紹介します。
9:30 AM
名古屋駅に到着!
名古屋を中心とした愛知県は、自動車や航空機などの製造品出荷額が昭和52年以来、40年以上日本一という「ものづくり王国」。陶磁器や織物などの伝統産業も古くから盛んで、西部に位置する尾州地域は、言わずと知れた毛織物の一大産地になっています。工場見学前に、名古屋のシンボル、ミライタワーを背景に記念撮影!
10:30 AM
工場めぐり① 株式会社アイディールカンパニー
名古屋駅から車で約40分。アイディールカンパニーは、自動車産業で有名な豊田市に隣接する長久手市にあります。車両シートや楽器ケース、椅子の張地など、厚物の縫製を得意とし、その高い技術力をもとに、独自のオリジナル生地を使用したバッグブランド〈LIVERAL〉を展開。ウエストボディバッグ「UDUKA」は、2024年の「CRAHUG BEST HIT」にもランクインしました。
「わぁ〜、広い!」と、工場に足を踏み入れるや否や感嘆の声を上げる佳子さん。工場はかつて牛舎だった建物を改装したそうで、長い通路や等間隔並んだ柱に、その名残を感じることができます。「1階は裁断場で、工業製品ならではの長く、幅広の生地を扱うことを念頭に置いた設計になっています」と話すのは、“ものづくりの窓口”となる営業担当の大田賢志さん。
延反機を使って生地を重ね、裁断機で一気に断ち切るという一連の流れの最後に佇む使い込まれた機械。「これは何ですか?」「革を漉(す)く機械です。自然の産物である革は、それぞれに応じて機械の調整が必要なため、専門の職人がいるほど扱い手の力量が試されます」。年季の入った機械に、時間をかけて技術を高めてきたプライドが宿ります。
いよいよものづくりの心臓部、縫製現場へ。2階に上がり、佳子さんの感性に響いたのはきれいに陳列されたハサミ置き場。「異物混入を避けるため、休憩中や業務終了後は必ずここに返却することになっていて、全部揃わないと帰れないんです」という大田さんに、「銀行みたいですね」と微笑む佳子さん。奥へ進むと、〈LIVERAL〉のバッグを縫製中の職人さんを発見しました。
「今縫っているのはどこですか?」「内ポケットの部分です」。細分化された20以上のパーツを毎日少しずつ縫い合わせ、数日かけて1個のバッグを完成させます。「底に入っているのは何ですか?」と佳子さんの質問は続きます。「ペフというウレタン素材を1枚1枚手作業で入れています。中身を衝撃から守り、型くずれを防ぎます」と大田さん。職人技が効いた細部へのこだわりも魅力のバッグです。
Yoshiko's message 「“使い方は十人十色”の言葉通り、LIVERALの『OONEショルダーバッグ』を犬の散歩時にエチケットバッグとして使っていることを営業担当の大田さんに伝えたところ、『機密性が高い生地なので、その使い方正解です!』と。高機能な工業用生地を取り扱うLIVERALだけあって、日常の暮らしを快適にする多用途な商品展開が今後も楽しみです!」
12:30 AM
ランチタイム♪
日本のなかでも、非常にユニークな食文化をもつ愛知県。昼食は、名古屋を代表する贅沢なご当地グルメ、ひつまぶしをいただきました。佳子さんが注文したのは、冬期限定の「白ひつまぶし」。外はパリッと香ばしく、中はふわふわの鰻に、たっぷりの特製白だれと胡麻、大葉、柚子が香り立つ逸品です。
うな幸(うなこう) 愛知県長久手市前熊溝下80-6 http://kappouhirokou.jp
2:00 PM
工場めぐり② 株式会社春日染工
庄内川の伏流水により、古くから染色工場が多く集まっていたという名古屋市周辺。CRAHUGで取り扱う〈HAAG〉のコンフォートウェアは、この地に工場を構える春日染工で染め上げられています。この日、遠路はるばるやってきた私たちのために、春日染工の加藤昌輝さん、〈HAAG〉を運営するスマイルコットンの片山英尚さんが工場を案内してくれました。
「これは『液流染色機』と呼ばれるもので、布を循環させながら染色しています。生地がムラなく染まり、水流によるモミ効果もあって風合いが柔らかく仕上がります」と加藤さん。染工場に置かれた機械はどれもスケールが大きく、金属の剛性感も相まって、佳子さんも「かっこいい!」と思わず声が出てしまうほどです。
「ここに入っているのも染料ですか?」という佳子さんの質問に、「これは柔軟剤」と教えてくれたのはこの工場で一番、歴の長い職人さん。染色を終えた生地は余分な染料を落とすソーピングを行い、柔軟仕上げをします。「このひと手間こそが、柔軟性や堅牢度といった生地の品質に大きく影響するのです」と片山さんは話します。
染め上げた生地は脱水を経て、乾燥の工程へ。「これはドラム式が4つ連なったタンブラー乾燥の大きいバージョン。温度を少しずつ下げていった4つの機械をすべて通り、時間をかけて乾かすことで、ふっくらと柔らかな風合いに仕上げています」と加藤さん。実際にこの空間に入って様子を見させてもらいましたが、縄跳びのように生地をゆり動かしながら、優しく乾かしていました。
染め、脱水、そして乾燥までを行う、まるで大きな洗濯機のような工場を出ると、井戸に取り付けられたしめ縄が。「染工場にとって水質はとても重要」と話す加藤さんに、「井戸はとても神聖な場所なんですね」と佳子さんは感心します。自然の恵みに感謝しながら生み出される生地だからこそ、〈HAAG〉の優しく抱きしめられるような着心地が叶うのです。
Yoshiko's message 「HAAGの始まりは、なんとボクサーブリーフの一型のみ!私、その当時からの大ファンなんです。なんとも滑らかなHAAGのオリジナル素材『Smile Cotton®』を染色するにあたって、春日染工・加藤さんとのチームワークは欠かせない。そう熱く語るのはHAAG代表の片山さん。お二人の仕事談義は尽きることなく、思わず『二軒目、行っちゃいますか?』と誘ってしまいそうでした(笑)」
愛知県のレポート
ものづくりの現場というと、職人の高齢化により衰退傾向のイメージがありましたが、今回訪れた2社は若い従業員たちが新しいアイデアを出しながら、和気あいあいと仕事をする姿が印象的でした。世界的な高級ブランドも認める、メイドイン愛知の生地と縫製技術。地域に根ざしたものづくりで、“今以上を創る”という新たなものづくりに期待が高まります。
Model:Yoshiko Kris-Webb Photo:Fabian Parkes Writing:Ayako Takahashi Edit:CRAHUG