【梶原加奈子の
想いごと対談】
極上のベビーアルパカの柔らかな服。
肌触りを大切にするブランド、TOQUEの提案。
前編

呼吸する素材

ブランド説明で使われているフレーズから惹き寄せられる〈TOQUE〉のこと。 丁寧に、丁寧に、繊細な感覚にこだわる日本産のモノづくり。着た人の安らぎを想像し、控えめに寄り添うようなシンプルな服の物語を紐解いてみたいと思います。

〈TOQUE〉は希少価値の高いベビーアルパカを使い、糸、編、縫製技術を徹底的に考えて極上の柔らかな風合いを引き出しています。触れてみると、まるで自律神経がゆるんでいくような安心感。こんなに優しい服をどんな人が作っているんだろう。とブランドを見かけた時からずっと、気になっていました

今回、CRAHUG の対談を通してタキヒヨー株式会社TOQUEディレクター大場雅仁さんとこだわりのモノづくりを支えている縫製工場、ティー・エフ・シー株式会社代表取締役社長森茂樹さんからブランドへの想いを聞かせて頂きました。

タキヒヨー株式会社 TOQUEディレクター 大場雅仁さん

ファストファッションから
スローファッションへ

【梶原】素敵な服のブランドが立ち上がったよ。梶原さん好きそう。と、知り合いから聞いた私は早速TOQUEのHPを拝見しました。穏やかでシックな写真の印象から、うん、素敵な感じ。と思いつつコミットメントのお話を読んでいると、テキスタイルデザイナーである私の心が強く揺さぶられるほど、原料から製品の仕上がりまで繊細なこだわりが満載でした。

伝わる人にだけでもいいから、最高と思うものを届けたいと思っている意志を感じました。きっと、とても服に想いがあり、沢山の経験を積み重ねてきた方が生み出しているのかもしれない。10年、20年後も、“着ている自分が満足できる服”とはどんなものか。私もそんな馴染みになる物に出会いたいと思いました。だから、初めてご挨拶するときはワクワクしました。日本のモノづくりを大切にしている人と繋がっていくのは嬉しいから。

ベビーアルパカ2WAY Vネックニット
クルーネック側も前にできます。

【梶原】こんにちは。初めまして。TOQUEの世界を色々な面から掘り下げて伺いたいです。ブランドを立ち上げたきっかけを教えて頂けますか?

【大場】ちょうどコロナが始まった2020年。外出が出来ない環境のなかで、何か新しいビジネスを考えようと動き出し、TOQUEを立ち上げました。長年、GMS売場向けのパジャマやルームウエアのOEMに関わり、家で心地良く過ごせる服を追求してきました。自社では海外ハイメゾン向けに生地を販売する仕事もあり、日本の良い素材や丁寧な縫製技術があることを知っていたので、匠の技を掛け合わせて肌触りが良く、ストレスがない服をお客様に直接販売していきたいと思いました。

【梶原】大場さんが経験を積み重ねてきた「家なか」の服が軸になっているのですね。目的が明確で、ブランディングも一貫しているので伝わりやすいです。ブランド名「トック」も素敵な響きで覚えやすいですね。名前の由来を教えて頂けますか?

【大場】TOQUE はスペイン語で「手触り」という意味があります。服に使っているアルパカの原産地であるペルーの言語がスペイン語という背景も影響しています。今までとは違う特別な素材を探しているとき、岐阜にある東和毛織さんのアルパカの糸が気になりました。初めて触れたような柔らかい繊維から肌心地良い服が思い浮かび、ブランドネームに繋がりました。

左:東和毛織株式会社/右:国際アルパカ協会認証のゴールドラベル

【梶原】自分自身が良いと思うものに真っ直ぐ向き合われたのですね。

【大場】そうですね。自分ともう1人、長年ルームウエア企画を組んできた女性デザイナーと共に、2名でモノづくりをしています。また、タイミング良くブランド立ち上げの時期に弊社の社長から大草直子さんを紹介してもらい、アドバイスを頂きながらターゲットのお客様を女性に絞り商品を作り上げていくことが出来ました。

TOQUE アドバイザー 大草直子さん

【梶原】大場さんの仕事はB to Bが大半と伺いましたが、B to Cに向けたEC販売、セールをしないで上質なものをリーズナブルに販売するという新たな挑戦にタキヒヨーさんの滝一夫社長も賛同し、自社ブランド立ち上げを応援してくださったこともターニングポイントですね。自然体な暮らしを大切にしている大草さんと話し合いながらTOQUEを構築したことも心強かったと思います。

富山県小矢部市の縫製工場TFC(株)

日本国内の職人たちの技術を守り、
後世へ繋げていきたい。 繋がりを大切にするこだわり。

【梶原】日本の服づくりは縫製工場さんとの関係を構築していくことも大切です。近年は工場の数が減り、人手不足が続いています。TOQUEは富山県小矢部市で縫製工場を運営しているTFC(株)さんと取り組まれているということで、森茂樹社長も今回の対談に同席して頂きました。森社長からは工場のことやモノづくりに対してのこだわりを伺えればと思います。

TFC(株)森茂樹社長

【森】TFCは95%カットソー、5%布帛でレディース中心の縫製をしている工場です。タキヒヨー株式会社の100%子会社として90名ほどで運営しております。コロナの間は外国人研修生の人数か30人から16人に減り、大変な時期でしたが仕事は継続して依頼がありました。現在は31人まで回復していますが、やはり人手不足の問題を常に抱えています。日本人の縫製工は2年に1人ぐらいの割合で入るかどうかといったところです。

カットソーは縮率が非常に不安定なのですが、それを把握してパターンに落とし込むことが大切です。また伸び縮みの影響をより小さくするために様々な工夫をすることで高品質なカットソーを作ることにこだわり続けています。

TOQUEについては、弊社がタキヒヨーさんの子会社であるという事や大場さんのことを知っていたので、モノづくりへの熱い気持ちに協力しようと思い、小ロットで受けています。とてもデリケートな生地が多いため、通常よりも、ゆっくりと縫い合わせなければ、余計なシワやズレが起きてしまうものばかりですが蓄積した技術で対応しています。

工場のアイロン作業

【梶原】森社長が大場さんを応援する気持ちがあってこそ、上質なモノづくりが継続できているのだろうと思います。小ロット生産への挑戦も工場の効率良い運営とは相反するかと思いますが、これからの日本生産を継続していくために工夫しながら対応しているのではないでしょうか。

【森】1人で1枚を縫う流れやQRに品質を維持しながらどう対応できるか考えています。縫い終わった後の製品を商品に変えていくために、アイロンかけは1枚1枚丁寧にすることにもこだわっています。ブランドタグは手で取りつけて、最後に、きれいに畳んで袋に入れています。

【梶原】モノづくりのバトンを安心して任せられるオンリーワンの仕事だからこそ、穏やかで優しい服が出来上がるのではないかと思います。美しい縫製が上質な服を支えていると思います。

大場さんと森社長からTOQUEが大切にしていることを沢山伺いました。ブランドの背景を伺うことで、肌触りから伝わる幸せが益々広がっていくことを願っています。

>>後編はこちら

Text & Photo:
梶原加奈子

CRAHUGのクリエイティブディレクター。大好きなテキスタイルに関われる日々に感謝。北海道の自然がクリエーションの源。

Date: 2023.11.30

CRAHUG編集部・おすすめの記事はこちらです

RECOMMEND