【梶原加奈子の想いごと】
日本のもの、快適なもの、昔からの知恵と現代の工夫
想いやりから生まれる工夫
当たり前のように存在する日本の便利な日用品。手で簡単に切れるテープ、書いて消せるペン、静電気防止スプレーなどなど。
日本人が得意な不便さや不快さを改善していく発想、気質を感じるデザインが、コロナで不安感が続く社会の中で世界から注目が高まっています。日本の職人さんと話していると、常に使い手が喜んでくれることを想像しながら努力を積み重ねていくマインドを感じます。誰かの役に立つもの、という想いで技を磨くことがモノづくりの発展を支えてきたと思います。実は、現代の技術の多くは伝統工芸の応用であったりすることも継承を重んじる日本のモノづくりの特徴を感じます。
〈輪島キリモト〉のスプーンは驚くほど軽く、圧倒的に持ちやすい。漆ならではのふっくらとした質感、奥行きのある表情は、下地・中塗り・上塗りと丁寧に塗りを重ねた「上漆仕上げ」によるもの。天然素材を使用することで、自然の中の循環を促進するモノづくりになる。末長く使っていただくためのサポートとして、商品のお直しも受け付けています。
海外でも仕事をしているなかで、日本の商品に注目されることが多々あります。服を小さく収納できる圧縮袋や何通りにも形を変えて使えるポケッタブルな服など、賢いプロダクト=メイドインジャパンであり、特にデザイナーの友達は「日本製が好き。日本に行ってみたい。」といいながら、日本のプロダクトをよくリサーチしています。
1枚の布から無駄なく服が作られる着物文化のような考え方は、今でもモノづくりのコンセプトで参考にされる機会が多く、SDGsとも通じていると思います。
〈Y.S.M PRODUCTS〉の照明は、縦にも横にも置けるミニマルなデザインで、主張しすぎることもなくどんな生活にも溶け込みます。
間接照明として、ディスプレイとして柔らかな光で部屋に表情を与えてくれます。
〈LIVERAL〉の「Ougi」は、レジャーシートとして使えるほど平たくなり、ざくざくと物を入れると立体的になる、平面的で立体的な多機能ボストンバッグ。使うシーンによって変化するプロダクトは、日本人の工夫する心、探究心を感じます。
同じく〈LIVERAL〉の「Niji」は「ベルトを自由にできるバッグが欲しい」という言葉から、日本の風呂敷をアレンジして左利きでも右利きでも使いやすいユニバーサルデザイン。また、縫製の際に無駄な生地がでないよう計算された形になっています。
〈tetra〉のクッションは、座ると自然とフィットして“くつろぎ”を与えてくれます。長時間座り続けても心地良い安定感があるのは、中のオリジナルビーズのおかげ。片手で軽々持ち上げられる手軽さも、モノと長く付き合う為の秘訣ですね。
和晒(わざらし)という昔ながらの手法で手間と時間をかけ、繊維の奥まで不純物を取り除いたガーゼ生地を使用した〈京和晒綿紗〉の製品。ガーゼ生地を1枚ずつ手で重ねて作られているので、吸水性と通気性も良く、ふわっとソフトな風合いで肌触りがとても良いのが特徴です。古来より伝わる柿渋染めは防臭、抗菌効果があり、ガーゼの柔らかさを損なわない特別な技術で染め上げられています。
今までも、これからも。
実際に日本に訪れた海外の方々から、日本庭園の秩序や禅の心、健康的な日本食や快適な生活用品、礼儀作法など、日本人の調和性ある行動を感じ取り、心が穏やかになるという感想も度々伺ってきました。
コロナと向き合い、心身共に疲弊する暮らしが続くなかで、日本人が生み出す快適な生活用品に世界が魅了される可能性があると思います。CRAHUGは職人さん達から昔からの知恵と現代の工夫を尋ねて、これからの暮らしに向けた便利なプロダクトを日本から発信していきたいと思います。