【梶原加奈子の想いごと】
心地回帰の暮らし
デジタルによる暮らしの変化
AIやIOTなど、デジタルツールが暮らしに浸透していくなかで、生産もデザインも効率化を求められつつあることが気になる日々です。工場でもDXにどう転換していくのか、エネルギー削減案やシステム改革の話が増えてきています。職人さんの培った感覚による判断も、場合によっては数値化されていく可能性もあります。最近はデザインワークでも、デジタル分析からの構築、画像育成AIなどからデザインされたものが、むしろ新しくて注目される動きが始まっています。パラダイムシフトが起こることが「これから」の日常で想像できます。
〈 embland 〉の職人さんと工場内の様子
価値を計る指標の変化
そんな気配のなかで、人間の役割とは何か?少しずつ考える人も増えているのではないでしょうか。なんだか、ちょっと未来に不安を持ちつつも、といっても、極端に人間とAIが対峙するわけではなく、将来的には人間とデータが協調して仕事を行うことがリアルかな、と思います。
この融合の進歩によって、私たちの価値観も働き方も変わりつつある。そして生き方が変わり、人間が必ずしも働くことを優先に過ごさなくてもよい時代がやってくるかもしれません。そうすると、お金の価値観も変わり、人と人の関係性の価値にも変化が現れるのではないでしょうか。価値を計る指標に、社会貢献的な活動が考慮される流れも強まっていくと思います。じわじわと、変化の予感を掴んでいる人たちは、「労働」ではなく「感性」について重視し始めているのではないでしょうか。
〈 POLS 〉の職人さんと打ち合わせの様子
過去の感覚に戻る暮らし
時代は繰り返すと言いますが、再び古代ギリシャの哲学や芸術、スポーツなど思考や体の本質に還っていく流れを感じます。最近私は、文化と倫理、人間の感情の存在を考えつつ、 暮らしのなかでは日本の古家具や食器が心落ち着くので、少しずつ身近に使うものを増やしています。
八女提灯の歴史と技を感じつつもほっこり可愛い
よく使うスプーンから感じる漆の触り心地
削られた溝に釉薬が溜まり白の濃淡が手に馴染む心地
仕事柄、未来のことを考えますが、毎日の幸せはちょっとした心馴染みの良いものに癒されるものですね。