【梶原加奈子の
想いごと対談】
CASUMINOデザイナー青木かすみさんと対談
複雑な立体の編み地から生まれた
ハンドメイドアクセサリー
モノづくりをする人がどんな思いでモノを作るのか、その思いを紐解いていく『作り手と繋ぐ人のCRAHUG対談』。今回は、〈CASUMINO〉のデザイナーの青木かすみさんをお招きいたしました。
青木さんは、極細ワイヤーを自在に操り、独特な存在感のある形を紡いでアクセサリーへと変化させます。洗練されたシンプルなデザインで、軽さも耐久性もあるアイテムたちは、どんな装いでもシーンレスに着用できます。 そんな素敵なものづくりをしている青木さんが、どんな思いで作り、届けているのか、お話を伺っていきます。
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【梶原】青木さんがアクセサリーデザイナーとしてブランドをスタートしたきっかけを教えていただけますか?
【青木】私は多岐にわたる経験を経て、アクセサリーデザインの道に辿り着きました。 学生時代には東京造形大学でグラフィックデザインを専攻し、アルバイトでアパレルの販売やディスプレイにも携わっていました。卒業後は、新宿のバーニーズニューヨークに就職し、ジュエリー売場での販売とディスプレイを担当しました。充実した毎日でしたが、5年目に販売実績で1位を受賞し、それが一つの節目となり、よし、これから好きなことをしよう!と思い立ち、段々とアクセサリーデザイナーの道に繋がったように思います。
〈CASUMINO〉デザイナー青木かすみさん
【梶原】販売で1位になるとは、すごいですね!柔らかな印象の青木さんですが、お客様を惹きつける魅力があったのだろうと思います。
【青木】いえいえ、どちらかというと、いつも顧客の皆様に大丈夫か心配されながら、応援してもらうような感じです。1位を頂いた時もお客様に支えて頂きました。
モノづくりの道に進む
【梶原】達成した気持ちを弾みに好きなことへ向かうため、退職を決意されたそうですね。それからすぐにアクセサリー作りを始めたのでしょうか?
【青木】アクセサリー作りに情熱を注ぐようになったのは、何か大きな決意からではなく、自然な流れでした。最初は、フェアトレードに関心を持つ友人から預かったビーズでアクセサリーを作ったり、幼馴染とのグループで展示販売会を楽しんでいました。 その後、バーニーズニューヨーク勤務時代からお世話になったNY在住のジュエリーアーティストのアトリエを訪れたことが刺激となり、自分でも本格的にアクセサリーを作りたいという気持ちが高まりました。そこから、ワイヤーを編む技術に挑戦し始めました。
青木さんがk14ワイヤーを編む様子
【梶原】周りにいる人達と関わりながら、徐々に自分のやりたいことが明確になっていったようですね。ワイヤー編みを初めて挑戦した時、思い描いていた通りの作品がすぐに形になったのでしょうか?
【青木】最初は編み物の経験がなくて、まずは編み図の本を見ながら、鎖編みをベースにひたすら自分流に3ヶ月間ぐらい編み続けていたら独特な立体編みの形が生まれました。 ブランド設立当初は手に入りやすい柔らかい真鍮ワイヤーで制作しておりましたが、長持ちするアクセサリーを作りたいと思い、途中からk14gfの素材に変更しました。でも、ワイヤーが硬くて最初の頃は編みこなすのに苦戦しました。
【梶原】ワイヤーに触れることで、自然に独自の複雑な立体編みを生み出されたとは驚きです。このように無意識のうちに作り出される作品は、独特の魅力がありますが、その再現性には難しさがあるかと思います。一見シンプルに見えるその編み方は、実は他の人に教えるのが難しい技術なのですね。
【青木】以前、ワイヤー編みのワークショップを開催していましたが、編み方をうまく伝えられなくて・・・。誰かに指示したりお任せすると、人によって違うものが仕上がっていくので、今でも商品は全て自分で編んでいます。
【梶原】〈CASUMINO〉さんのデザインも独特な雰囲気がありますね。いつもどのようにイメージされているのですか?
【青木】私の家がある町田の近辺は緑豊かで、自然からインスピレーションを受ける機会が多いです。植物の写真を撮影したり、絵を描くことでデザインのキッカケを掴んでいます。
左:青木さんが影響を受ける自然の写真/右:青木さんのドローイング
ブランド名の由来は
【梶原】アクセサリーのデザインが繊細なラインの集まりに見えるので、何か繊細な花がモチーフなのかな、と想像していました。ブランド名の由来は“かすみ草”なのでしょうか?
【青木】ブランド名は、実は私の名前をもとに考えました。青木かすみというので、「かすみのもの」という意味からです。ブランドの立ち上げをする時に、どんなネームにしようか考えていたら、父から読みやすいし良いんじゃないか。と背中を押してもらいました。KASUMINOではなくCASUMINOにしたのは、私が丸い形が好きなので、ロゴを考えていた時、形の印象が良かったからです。
青木さんがデザインしたブランドロゴ
【梶原】そうなんですね!商品デザインも、どことなく丸みがあるシルエットが多いですよね。青木さんは美大での経験からロゴもブランディングも全てご自身で手がけていて、グラフィックデザイン、ディスプレイ、ジュエリー、販売接客など、積み重ねてきた経験が全て今に繋がり、まさに丸ごと、「かすみの」ですね。
販売会から繋がり広がるものを大事に
【梶原】昔からのご友人と共に販売会に出てから、繋がりがどんどん広がったそうですね。
【青木】ハンドメイドアクセサリーは、当時は珍しかったのか、立ち上げた当初から注目が集まりました。仲間たちと共に販売会を開催する機会が増え、その輪は友人を通じてどんどん広がっていきました。SNSを活用して販売会の情報を発信し、お客様とのコミュニケーションも大切にしています。
展示会や販売会では、私自身がアクセサリーを編みながら滞在するときもあります。そうすると、本当に作っていることが伝わり結構驚かれます。イアリングを両耳分編むのに、大体1時間半ぐらいかかりますが、編むところを見ている人はスピード感に驚きますね(笑)
左:POP UP販売会/右:絵とアクセサリーの展示販売会
【梶原】青木さんはモノづくりから販売まで全て自分で動かれているので、お客様とのやり取りが多いと思いますが、そこからデザインにも影響がありますか?
【青木】そうですね。私のデザインには2つの軸があって、まずは自分が作りたいもの。それはデッサンを重ねることや、お客様の声を聞いていて、こんなのがあるといいね。と話したこともアイデアに繋がります。 2つ目は、使いやすいものをデザインすること。Hoopというイヤリングは何回か試作をお客様に付けてもらいながら考えました。使い心地や強度の安定感を考えて、3本のかぎ針の太さを調整しながら制作しました。イヤリングなのですが、太さがあるので前からみて後ろ側が見えないため、ピアスのように見えることも評判は良いです。
CRAHUGとの出会い
【梶原】CRAHUGは作り手と使い手を繋げる架け橋になりたいと思い立ち上げましたが、参加してみていかがでしょうか?
【青木】友人の〈susui〉の藤田さんがCRAHUGに参加するのとほぼ同じタイミングでお誘い頂いてお話を伺いました。オンワードさんという大手企業がモノづくりする人を市場に繋げようとしてくれていることに興味を持ち、ジャーナルサイトもシンプルで素敵でしたので、前向きに関わってみたいと思いました。
参加してから、ONWARD CROSSETのCRAHUGサイトで商品を見たという方がリアルでも見たいと言って販売会に来てくださる方が増えました。さらに、CRAHUGを通してギフト購入された方からはDMを頂きました。プレゼントした彼女さんが私の手書きのメッセージを喜んでくださったと教えて頂きました。お客様とこのような交流が出来て嬉しいです。
【梶原】お客様との出会いのきっかけを作ることが出来て良かったです。
今回の対談では、青木さんのモノづくりに対する情熱とストーリーをたくさんお聞きすることができました。作り手の深い想いを知ることで、商品を一つ一つ眺める度に、その背景にある自然の美しさや、お客様への配慮がより一層感じられるようになりました。CRAHUGはこれからも、CASUMINOさんの持つ多彩な魅力を皆様にお伝えしていきたいと思います。この度は貴重なお話をありがとうございました。