ツバキと生きる島、利島
利島農業協同組合
ソメイヨシノが一斉に開花するのはすべて1本の木のクローンだからだそうです。でも藪椿は10月に花を咲かす木もあれば、3月に咲く木もある。各々が好きな時に花をさかし、好きな時に実を落とします。東京から南に約140kmに位置する断崖絶壁に囲まれた人口約300人の利島では島の面積の約8割がこの藪椿。島内で取れた椿実を100%使ったオーガニックコスメ〈神代椿〉を作っている人たちにお話を聞いてきました。
江戸時代から続く100%オーガニックコスメ
ー利島では昔から椿油を作っていたんですか? 【加藤】そうですね。椿産業自体は300年前、江戸時代から続いてきたものです。この利島は川がない島なのでどうしても水田を作るのが難しかったので、年貢として米の代わりに椿と木を納めていたのが始まりだそうです。
ー江戸時代から続くオーガニックオイルなんですね ちなみに、当時は何用だったんですか? 【加藤】主に食用油として使われていたらしいです。江戸時代の偉い人が食べるために奉納されたり、海外への貢ぎ物としても使われていたような贈答用の高級油ですね。でも当時から薬用として肌や髪に塗る今の椿油のような使われ方もあったようですね。
ー椿油であげた料理、食べてみたいです。 ところで、椿の実からどうやって油になるんですか? 【加藤】まず時期としては9月ごろから4月まで椿実を収穫しています。藪椿は個体差が激しくて実がなる時期がバラバラなので収穫と搾油を同時に行っています。椿実はクルミやピンポン玉くらいの大きさで、中に6~9粒の種子が入っていてそれを乾燥させて搾油しています。落ちた椿実を収穫するんですけど、全部手作業で拾うから地面が綺麗じゃないと見つけるのが難しくなったりしちゃうんですよね。だから5月~9月は地面を綺麗にするために草刈りと野焼きなんかをしています。収穫された椿実は各農家さんが天日干しで乾燥させてから搾油工場に集まります。工場では主に、乾燥、選別、搾油の工程を通って油になります。
>>神代椿はこちら ーまさに文字通りの利島産の椿油なんですね 島内生産ならではなことはありますか? 【加藤】原料の椿実と搾油工場が近いのでかなり新鮮な状態で搾油ができることだと思います。あと農家さんたちとも距離が近いのでコミュニケーションをとりながら搾油ができるので農家さんごとの原料の癖みたいなものが把握できているのも島内生産ならではなところだと思います。
ー今回の〈神代椿〉の名前の由来を教えてください 【加藤】この利島にある藪椿の元になったと言われているご神木の名前が神代椿なんです。島民には馴染みが深い名前ですね。
ーなるほど、〈神代椿〉が立ち上がったきっかけはなんですか? 【加藤】昔から椿油自体は製品として販売していました。でも年々、農家さんの高齢化も進んできていて生産量も徐々に落ちていってます。なのでリブランディングをして椿油の背景であったり、島の物語を付加価値として届けて農家さんに還元できればという思いで立ち上がりました。あと個人的な思いとしては、どの業界にも共通することだと思うんですけど原料がないとなにもつくれないのにそこに正当な利益が配分されていない所を変えたいと思っています。
ーどの業界にも言える根深い問題だと思います。 最後に〈神代椿〉と利島の未来への思いについて教えてください 【加藤】まず第一に農家さんための環境を整えたいです。椿油は全国的にも稀有な存在なのでそこから島にいろいろな人を呼び込むような形を作っていければと思っています。利島は全人口で300人くらいの島なんですけど、移住してきた方も多くいます。椿に興味がない移住者の方も多いのでそういう方たちも興味をもつような流れを作っていきたいです。