岐阜県羽島郡笠松町、静かに流れる木曽川のほとり。自然あふれるこの地で木曽川染絨は、天然由来の草木染を追求し環境にやさしい素材を提案してきました。そしてさらに、笑顔のある暮らしを生み出していけるようにと立ち上げた製品ブランドが〈kiso〉です。このファクトリーブランドに込められた想いや、こだわりについて、今回は木曽川染絨株式会社の代表取締役社長の安藤篤史さん、取締役工場長の今尾学さん、開発グループリーダーの山田昌紀さんにお話を聞いてきました。

木曽川の地で作られた草木染め素材をもとに

ー笠松町に初めて来たのですが自然豊かで素敵な場所ですね。産地や技術の特徴を教えてください。

【今尾】ここは元々尾州毛織物の産地ですが、その中で私たちは少し異質に発展し、ファッション・スポーツ系の合繊複合素材の染色を得意としてきました。現在はコットン素材を染色する機会も増えています。

ーなぜファクトリーブランドを立ち上げたのでしょうか?

【安藤】今までは、丸編み素材の染色整理加工というOEM業務を40年間やってきました。しかし結局どれだけいい商品を作ろうとしても、材料費も人件費も上がっていく…。どうやって会社や技術を残していくかと考えたときに、一番難しい道ではありますけど自社のブランドを作って製造販売することが一番いいと、一度その険しい道に飛び込んでみようと思ったんです。

こちらは常圧液流染色機。生地の特性によって染色機を使い分けるそう。

ーなるほど。険しい道、やはり理想と現実のギャップはありましたか?

【安藤】現実から話すと、草木染の需要が日本人にはまだまだ少ない。そして品質と値段の釣り合いが難しいところです。でも理想はその難しさを理解してもらって、素材の魅力を感じてもらいたい…。日本で草木染が当たり前になれば、もっともっと製品の幅も広がるのかな、と思います。

「基礎」の暮らしを笑顔にするために

ー想いが詰まったブランドですが、〈kiso〉と名付けた由来はなんでしょうか?

【安藤】木曽川染絨の「キソ」、基礎の暮らしの「キソ」そこの掛け合わせです。我々工場の従業員であったり、携わるお客さんであったり、そしてその家族であったり、人々が笑顔で暮らしてほしいということ。「基礎」の暮らしを笑顔にするために、そういう思いで〈kiso〉を立ち上げました。

ー木曽川のほとりのこの場所も、〈kiso〉という名前やイメージにぴったりですよね!

【安藤】街の特徴としては、災害がないので住みやすく、川があって山があって、空気がきれいで自然が豊かな町ですね。名古屋にも電車で一本で便利です。

ー素敵です。原料、素材もこだわっているのでしょうか?

【山田】染料に関しては草木染料、天然のものを使用しています。糸もオーガニックコットンを中心に使用をしています。合繊は出来るだけリサイクル糸を使用し、環境に配慮した染料や生地で〈kiso〉の製品を作っています。

染色だけでも、染色・脱水・開反の工程を経て生地が染め上がります。

〈kiso〉について思いを語る安藤さん。新たなことに挑戦することの難しさと楽しさをお話いただきました。

温もりのある色合いや風合いが日々の笑顔を生みだす

ー自然に寄り添った原料なんですね。〈kiso〉の染色について詳しく教えてください。

【山田】草木染は草木を煮出してつくった染液で生地を染める染色方法です。 通常草木染は綿サイドにしか染めることができないので、今までは綿100%の生地で草木染料で染色していたのですが、天然染料100%だとどうしても限られた色でしか染色できません。そこで今回、綿とポリエステルの混紡糸を使用し、綿サイドは草木染料、ポリエステルサイドは化学染料を使いミックスして染めています。それにより様々な色味の明るい色や暗い色も表現できるようになりました。

ーでは、お客様に楽しんでいただきたいこだわりのポイントは色の部分なのでしょうか?

【山田】そうですね。楽しんで頂きたいのは自然な色の変化です。草木染料で染めたコットンサイドはどうしても退色していきます。ですがポリエステルサイドの色が残っていきますので、少しずつではありますが色が明るくなっていく仕掛けをしています。個々の生活に合わせて変化する色を育ててもらいたいです。

ボタデジ加工は植物染料の優しさのある色とデジタルなカラーを掛け合わせたハイブリットな加工。多種多様なカラーからオリジナルを作り出しているそう。

〈kiso〉の製品は経年変化で色が明るくなるので、洗う度にその変化を楽しむことができます。

ー着用するごとにどんどん愛着が湧きそうです! では最後に。〈kiso〉の今後の展望、そして安藤さん個人の今後展望を教えてください。

【安藤】心身が健やかに快適に生きるための基礎を考える暮らしに貢献でき、デザインやファッションを通して国内外のお客様に感動を届け、笑顔のある優しい暮らしが実現できるように、草木染商品〈kiso〉を提案していきます。そして、木曽川染絨が成功する事で、日本中の様々な業界の工場に夢や希望が与えられる存在になり、かつ、日本中が世界中が笑顔で幸せに生活出来るような社会になっていくように貢献したいです。 個人としては、お客様始め、社員、家族、友人、知人等、関係してくださる全ての方々に感謝し、全員を笑顔に、そして幸せにしたいです。又、服を選ぶ時にワクワク、ドキドキする様な商品をお届けし、夢や感動を与えたいです。

ただただ笑顔を届けたい。そんな想いで作られている〈kiso〉は着るだけで心が落ち着き、リラックスできるような色合いや風合いです。 今回お話を聞いて、草木染について知ることができました。〈kiso〉を触って、見て、感じて…草木染の魅力は使ってみたらきっとわかる!そう自信を持って言えます。 皆さんも是非、草木染の魅力を感じてみてください。きっとあなただけのお気に入りの一着が出来上がるはずです。

  • 木曽川染絨株式会社

    木曽川染絨株式会社

    1950年、岐阜県にて繊維類の染色加工業として創業。我々は、生地の染色整理加工を生業とする企業として、全ての技術と創造力を結集し、少数精鋭でありながらもお客様に満足して頂ける物作りに挑戦してきました。kisoは木曽川の地で作られた草木染め素材をもとに、安らぎ感のある製品を提案します。自然から表現された色や動きやすい形から、心身の基礎を整えていく暮らしに役立つものを生み出していきたいと思います。

Text & Photo:
及川 理菜

1才の姪っ子を愛でるのが趣味。CRAHUGのEコマース担当。好きなラジオのコーナーは霜降り明星のANN「ポケットいっぱいの秘密♪」のコーナー

Date: 2023.08.31

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