米沢の地より山を越えて
株式会社nitorito
目の前に広がる田んぼや山々、自然豊かでおいしい空気…時間がゆったりと流れていくような米沢。そんな「米沢らしさ」をロゴマークやストールに落とし込む〈nitorito〉は、ニットと織と=「knit to ori to」という言葉を組み合わせて誕生しました。 米沢の地より山を越えて〈nitorito〉届けたい。そう語るのは株式会社nitoritoの鈴木さんとデザイナーの斎藤さん。今回はお二人にお話を聞いてきました。
写真右から鈴木さんと斎藤さん。〈nitorito〉と米沢の魅力をたくさん教えていただきました。
「ニット」と「織」と
―会社は何年の創業でしょうか?
【鈴木】株式会社nitorito自体は2020年の9月に立ち上げたのでちょうど1年が経ち、2年目に入りました。〈nitorito〉の生産を担ってくれている青文テキスタイルは明治10年創業144年目の米沢織のテキスタイルメーカーです。
―米沢織とはどういう織物なのでしょうか?
【鈴木】米沢はどちらかと言ったらOEMの産地なので、米沢織には定義がないんです。ある意味「なんでもできる」というのが特徴です。
―なるほど。地域独特の特性などもあったりするのでしょうか?
【鈴木】織物の産地としては米沢は最北で、撚糸屋さん・機屋さん・染色工場・縫製工場…という風に洋服を一貫して作ることができる産地です。その分、外部からの依頼が多く、やはり特性が出しづらい…。さらに自分で前に出て何かをするということが少し苦手な、東北の特性も持っているかもしれません。
―そういった特性の中でも、〈nitorito〉というファクトリーブランドを作った、そのきっかけを教えてください。
【鈴木】目に見えるところで何を作って誰に売っているのかわからない、そういったOEMの仕事だけではいけないと考えたのがきっかけです。米沢の皆様の目に見える製品を作ることによって、若い人にもモノを作る産地があるんだということをPRしていくことが必要だと思ったんです。そこで、自ら米沢の商品を作って発信していこうと決めました。
-〈nitorito〉にはどんな特徴があるでしょうか?
【鈴木】〈nitorito〉の生産を担う青文テキスタイルはジャガードで柄を織る設備と丸編みの柄を編む設備を兼ね備えている会社です。両方同じ敷地内で扱っている会社は珍しく、ニットと織物の機械を持つ特殊な生産形態の中、長年培ってきた確かな技術によって〈nitorito〉が作られています。
―だからニットと織と=「knit to ori to」、〈nitorito〉なんですね!ロゴも特徴的ですよね。
【鈴木】ロゴは米沢は盆地に囲まれているので山なりをイメージしています。まずは内側・ローカルから発信していきたい。そういった思いを込めて、米沢にこだわって商品を作っています。米沢の身近な風景をモチーフに、ロゴの下にはmade in YONEZAWAと入れています。
米沢のお山をイメージしたロゴ。タグにもmade in YONEZAWAの表記が。
個性豊かな編み地を表現してくれる丸編み機。1番古い機械は昭和50年代製だそう。
ジャガードで柄を織るレピア織り機。
はじまりは 米沢の風景や自然、文化からの発想
―モチーフは斎藤さんが描いていると思うのですがどういったところからインスピレーションを受けているのでしょうか?
【斎藤】生活していて気になったものや、ちょっとお出かけしたときに素敵な景色だなって感じたものを切り取ってスケッチをしています。電線や田んぼなど、時期によって見え方も変わるのでそれをデザインに落とし込んだり…。ストールとして80cm×160cmのキャンバスの中にどう表現できるのか。服にすると一見派手なデザインもストールにすることで挑戦しやすいし、無地が流行っていたりするからこそアクセントとして取り入れやすいものになっています。
デザイナーの斎藤さんが、散歩中に電線からインスピレーションを得たデザイン。
―ストールはキャンバス…素敵です。一番のおすすめの商品は何でしょうか?
【斎藤】「mountain&moon」やっぱこの代表作は外せないです。サイド部分がお山になっていて、空に月が浮いていて、そんなイメージを差し込んだストールです。初めて作った柄でした。色は三色載せて裏もきれいなんです。
―「mountain&moon」が第一作目だったのですね。
【鈴木】ファクトリーブランドを立ち上げる際、これと言ってコンセプトもないし、外部に頼むのも難しい中で、斎藤が「mountain&moon」を作ってくれて、『あ!これだったら人の心に訴えかけられるかもしれない』と思ったんです。自分にはこの発想はなかったので、これなら挑戦できるかなと思ったのが〈nitorito〉の始まりです。
サイド部分がお山、中央に空に月が浮いているデザインです。
>>〈nitorito〉【UNISEX】mountain&moon ストール/17,600(税込)
―こんな人に是非おすすめしたいという人物像みたいなものはあったりしますか?
【鈴木】一つの商品をシェアできるように作っているので、家族でシェアしてくれたら嬉しいです。〈nitorito〉のストールを通して会話が生まれたら面白いなと思います。
ゴミと呼ばれている糸たちが 光り輝いて見えてくる
―SDGsについて取り組んでいることはありますか?
【鈴木】生産の際に出てしまう廃材を利用してiroiroというストールを作っています。 勿体ないのですが最後まで使えない糸というのがどうしても出てしまうんです。その余った糸を捨てずに集めて作ったのが、iroiroです。一つの製品約1Mの中に糸の切り替わりがあり、1枚1枚違った色合いで、1点もののストールです。それにプラスして、ネームタグはちょうど色の切り替わりの部分を使用しています。
―未来のモノづくりに向けて、どのように〈nitorito〉を形作っていきたいですか?
【鈴木】モノづくりという大きなプラットフォームの中で、手を使ってモノを作る「日本のモノづくり」というのはなかなか難しい時代になりました。やりたくてもやれない、淘汰されてしまう…。そうすると本当に無機質なものばかりになってしまう…。そういう意味では、歯を食いしばってクラフト感のあるものを〈nitorito〉は作り続けていきたいし、少量生産を大切にしていきたいです。そういった「モノづくり」を人に伝えていくことによって、最終的にはぬくもりや温かみ、原風景を伝えてければ嬉しいですね。手と手を握って伝えていくようなそんなモノづくりを残していきたいと考えています。
左右に腕を出せるカットラインもあり、お好みの位置でカットする事でポンチョの様に着るストールに変身!
>>〈nitorito〉【UNISEX】yane ストール/19,250(税込)
―最後に。今後の展望や夢を教えてください。
【鈴木】商品を五感で感じて体験してほしいと思います。例えば布を切る製品を通して、買ってくれるお母さんもその子供も、ああでもないこうでもないと触って・見て・着て…楽しんでくれればとてもうれしいですし、そういった服育から布の価値・服の価値が上がってくると思うんです。〈nitorito〉を通して子供たちが洋服や布に興味をもってくれれば…そんな夢を持っています。小さな頃から商品のストーリーを感じて、自分にとって価値のあるものを選べるような体験をたくさんしてほしいと思いますね。
斎藤さんのデスクには〈nitorito〉の元となるデザイン材がたくさん詰まっていました。
米沢の魅力をストールに落とし込んだ〈nitorito〉。一つ一つの商品にストーリーがあり、デザイナーの斎藤さんが受け取った感動をストールを通して感じることができます。 今回の取材を通して〈nitorito〉の魅力だけでなく、米沢の魅力も存分に感じとることができました。
最近家族と会話をしていないな…そう感じたときには是非〈nitorito〉のストールを通して、会話を増やしてみてはいかがでしょうか?